topimage

2017-08

牢の話 - 2011.03.21 Mon

PC整理していたら出てきた二次創作SS。
書いたのは何年も前ですが永久封印も何なので載せます。追記で読めます。
DSのアヴァロンコードのヒースティア。5章の終わりに捕まったときの話。微鬱。

「……女の子と同じ牢に放り込むのか?」
「お前たちはここで忘れ去られて死ぬんだ。その反逆者に何かしたければ好きにしろ」
 鉄格子の向こう側から返ってきた答えは冷めたものだった。
 下卑た笑い声を残し、鎧甲冑の兵士はさっさと引き上げて行く。


 兵士の足音が聞こえなくなった後、ヒースは天井を仰いだ。
 宙吊り牢の錆びた鎖が見える。
(さて、どうする……?)
 牢の周りは暗く、しかもかなり広いようだ。奇跡的にこの牢から抜け出したところで、
完全に脱出できるのかどうかなど見当もつかない。
 辺りを覆う淀んだ空気が、人ならざるものが近くを徘徊していることを伝えてくる。
 多少の亡霊などは相手にもならないが、無駄に彷徨い歩くようでは体力の浪費は確実。
力尽き倒れてヤツらの仲間入りをするのは御免だった。
 
(……こいつのこともあるしな)
 牢の片隅に座り込んで震えている、薄茶色の髪の少女を改めて見た。
 この牢の、自分以外のたった一人の住人。
 彼女こそが預言書に選ばれた英雄だという。
 奇跡の力を使い、先の戦争に勝利をもたらしたのだとか。
 もっとも、その名声も反逆者の汚名と共に露と消えてしまったようだが。
「英雄……か」
 華奢なこの少女には、あまりにも不釣合いな呼び名だと思った。
 少なくとも今は、辛い仕打ちに打ちひしがれるただの女の子にしか見えない。

「名前は……ティア、だったか?」
「……」
 黙ったままでいるのも気まずいと声をかけてみるが、少女はうつむいたままだった。
「答えたくないか。嫌われたな。それも仕方ないか――」
「……はい」
 ぽつり、と少女は返した。
「そうか。君はなぜ、預言書を手にしたんだい?」
「……前は?」
「ん?」
 うまく聞き取れなかったので聞き返すと、少女は顔を上げた。
 震える唇を動かし、消え入りそうな声で彼女は繰り返した。
「あなたの……名前は? 帝国の将軍さん」
 言われて、名乗っていないことを思い出す。
「ああ、そうだったな。オレはヒースだ」


「……それで、預言書を?」
 ティアは、こくりと頷いた。
 喋っていたほうが気が紛れるのかもしれない。曇った表情は晴れないが、
それでも彼女は、ぽつりぽつりと、預言書を手に入れてからのことを語りだした。
「つまり、あの時平原で見つけた鎧は……君が」
「ごめんなさい」
 いたたまれなくなったのか、ティアは顔をそむけた。
「謝らなくていい。君は自分の身を守っただけだ。そうか……随分、近くにいたんだな」
 平原で行方の分からなくなった兵士と残された鎧。誰の手によるものかと思っていた。
 こんな時に謎が解けるとは。
 何の因果か、あの時探していた相手は今ここにいる。


 それからしばらくの間、ティアの話に、ヒースは半ば聞き入っていた。 
 彼女の冒険譚はもちろん純粋に面白かったし、状況が状況なだけに弱々しくはあるが
それでも十分可愛らしく聞こえる彼女の声に、なんとなくほっとする思いだった。
「それで、寒がりのレンポが……」 
「ミエリったらレンポにちょっと怒っちゃったみたいで……」
「ネアキは暑くて苦手だって……」
「ウルがね、冷静にって……」

 ――ふと、彼女の声が止んだ。
 少女の虚ろな瞳が、牢の外の闇をただ呆然と見ている。
「今は……みんな……いない……」
「……ティア?」
 少女の頬を、つうと一筋の光るものが伝うと、

「う…っ、うわあああぁん、レンポ、ミエリ、ネアキ、ウル、みんな……!」
 塞き止めていた感情が一気に溢れたのだろう、ティアは声を上げて泣き出した。
 奪われた預言書を追っていたこの少女を邪魔したのは、
(……オレ、だな)
 もちろんあの場には帝国兵が何人もいたから、もし仮に自分が止めなくとも、彼女が
無事に預言書を取り戻すことはなかっただろう。最悪、殺されていたかもしれない。
 あれは任務だった。だが……。
 預言書の暴走で、ローアンの街の建物も住民も吹き飛ばされてしまった。
 理想の国家に続く道とは到底思えぬ惨事。
 あの災厄を引き起こしたのは自分ではない。しかし、その発端には関わっている。

 しゃくりあげるティアの隣に屈みこんで、ヒースは彼女の背中をさすった。
 黙りこくったままの居心地の悪さを嫌って声をかけたのに、その相手に泣かれては
何とも沈痛な気分になる。

「……こんなこと、言える立場じゃないかもしれないが」
 自分への断罪のように聞こえる嗚咽を止めてしまいたいという、利己的な感情が
心のどこかに確かに存在していたが、
「君が預言書に選ばれた人間なら、失ったものを取り戻せる機会がきっと来る。だから――」
 それでも、今の彼女を放ってはおけないと思うのは、間違ってはいないはずだ。
 そこまで心は凍りついちゃいない。

「……“あきらめるな”?」
 続けようとしたヒースを、ティアは遮った。涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて。
「そうだ」
「精霊も……そう言ってたの」
 また精霊か、やれやれと思いながら、それでも泣き止んでくれたことに安堵した。
「いい連中だな」
 ティアは少しだけ……本当にほんの少しだけ精気の戻った声で、答えた。
「はい、みんな大好きです」


 それから牢の中で、いくらかの時を、何をするわけでもなく話すわけでもなく二人で
無言で無為に過ごした後。
 ティアは少し腕を動かせば互いの体が触れるぐらいまで近寄って、不意に口を開いた。
「ヒースさん、あなたは……いい人?」

 ヒースはティアをしげしげと眺めた。
「変わった質問だな。こんなときにそんなことを聞くのかい?」
「聞いちゃダメ? 嫌いな相手には言いたくない?」
「おいおい、いつ君のことが嫌いだなんて言った?」
 多少落ち着いたとはいえ、ティアの目は真っ赤なまま。
 その上場違いに感じるような不可解な質問をぶつけてくる。
 しかし、どう答えろというんだ? いい人かどうかなど。
 返答に窮していると、ティアがこちらの顔を覗き込んできた。黙ってるわけにもいくまいと
適当な言葉を探す。
「……どうかな。オレは戦争に関わり過ぎた。敵も味方も、数え切れないぐらい死なせてきた」
「じゃあ悪い人ですか?」
「そう思われるのは悲しいな」

 ティアは、しばらくヒースの顔をじーっと見て、その後首をかしげた。
「ええと、悪い人だけど、悪い人だと思われると悲しくなる人?」
 ヒースはいっそう困惑した。一体、彼女の中でどう認識されているのか。
「預言書には、何て書かれるのかな。ヒースさんのこと」
「オレも載るのか」
「はい。いろんな場所のこと、いろんな人のこと、たくさん記されていくんです。
もし今持っていたら……」

「ヒースさんのページに、悪い人だけど、悪い人だと思われると悲しくなる人って、
書き足すのに」
 ティアは僅かな笑顔を見せた。
 物憂げなは未だ消えないが、それでもこの闇の中に見出された光明のように。


 周囲は魔性に満ちた真っ暗な闇。宙吊り牢を繋ぐ鎖の軋む音は変わらず聞こえてくる。
 兵士どもがこの牢から出してくれるなどとは考えていない。
 それでも、絶望からはまだ遠かった。
 奇跡を信じる価値も、秘めた力に賭ける価値もあると思ったのだ。
 預言書に選ばれた者の持つ、今はまだ小さなその希望に。

 ―了―
スポンサーサイト

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://herbsfolles.blog103.fc2.com/tb.php/82-9e5b359a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

発掘品 «  | BLOG TOP |  » 森のエルフ

プロフィール

asahiruyu

Author:asahiruyu
一次創作メインで絵や小説を制作する雑多ブログ。メジェド物は「メジェドアルバム」またはカテゴリ「二次創作絵」で過去記事をご覧ください。
絵等の依頼はカテゴリ「依頼について」を参照の上、ご相談ください。

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリ

配布物 (1)
オリジナル絵 (162)
ゲーム話 (181)
お絵かき道具 (70)
姉と弟と剣と剣関連 (26)
黒い魔女と白い弟関連 (86)
崖の砦と金の姉弟関連 (33)
親ファン関連 (12)
その他一次小説 (10)
国史学園関連 (62)
二次創作文章 (4)
二次創作絵 (93)
進行中の絵の話 (27)
雑感とか (186)
依頼について (1)

最新記事

描いた絵

検索フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: