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2017-10

残されたもの(2) - 2011.04.08 Fri

つらつらと書いていた人狼BBS二次創作SSの2回目。
4/4の続き。
狼騒ぎ終了後の神×妙話。二人とも村側。
追記で読めます。続きはまた後日。多分あと一回で完結。

(2)

 レジーナの宿に帰ると、雨でずぶ濡れの服を脱いで暖炉の前で乾かし始めた。代わりに
羽織るものを奥から引っ張り出して身にまとう。

 リーザが言うには、あの時、村の奥へ去っていったのではなかった。
 実は彼女はしょげて宿の陰にいたらしい。
 気づかずに走っていった自分を見て、驚いて後を追いかけたという。
 自分が追いかけていると思っていたのが実際は逆だったわけだ。
 疲労感がどっと襲った。まったく、どれだけ振り回されているのか。

「風邪を引いたらどうするんです」
 ただの風邪で済めばいいが、こじらせたら場合によっては命取りだ。
「あんなにあわてて走ってっちゃうなんて思わなかったの」
 毛布にくるまったリーザは、申し訳なさそうに視線を落とした。
 神父は宿から出ては来ないと思っていたらしい。もし出ようとしても、玄関の傍に隠れて
いただけだから、すぐに見つかるだろうと。
 脇目も振らず雨の中に突っ込んで行くのは予想外だったと言う。
 
 聞いていた神父は、小さな疑問を口にした。
「……あの雨の中、よく追って来られましたね」
「どこにいるか分からないと、守れないから」
 ジムゾンは少女のいらえに驚いた。
「まだ、狩人の力は消えていないのですか」
「うん……でも、みんながいたときみたいには、はっきりとは分からないの。そのうち、
分からなくなっちゃう気がする。狼さんが出る前に戻るのかな」
 神父さんはどう?と聞き返すようにこちらを見上げるリーザに、ジムゾンはゆっくりと
横に首を振った。
「私はもう、何も視えません」
 自然と、窓のほうに目がいった。水滴のついた窓の外は真っ暗で何も見えないが、
教会の墓地の方角はあちらだった。


   ◇  ◇  ◇


 ――誰も死んで欲しくねえってんなら、村の奴を食い殺したくてうずうずしてる狼どもを
 放っておいていいはずがねえだろ!
 自分は手を汚さなくても祈ってりゃ神サマが救ってくれんのか?
 狼どもは消えてなくなるのか? 答えろ!

 昨日まで仲良くやってきた村の住人同士で殺しあうのは嫌だと、人殺しの投票など
したくないと、宿に集まった面々に告げて教会に戻ろうとしたときに浴びせられた
あの声は、今でもはっきりと覚えている。

 死者を増やしたくないのなら、皮肉にも殺人の決断からは逃れられないのだ。
偶然にも他の者が持たぬ霊威を発現しているのならばなおのこと。その力を以って
村中が狼の犠牲にならないように動かなければいけない。
 日が過ぎるごとに屍は積み上げられてゆく。
 なにより大切な相手を死なせたくないのならば、手を血で汚すしかない。

 それからの気が狂いそうな毎日で、狼だと思うものを探した。
 処刑のとき、あるものは完全に諦念に飲み込まれて、大した抵抗もせずに息絶えた。
 あるものは泣き叫んだ。「僕は狼じゃない! 死にたくない、まだ死にたくないよ!」と。

 苦渋の決断を繰り返した結果、自分は今こうして生きている。
 村を恐怖に陥れた人狼たちは皆、墓の下で眠っている。
 彼らの餌食となったものも、無実の罪で処刑されたものもまた。

 誰を無実の罪で殺したのか。霊視の力のおかげで、よく分かっていた。
 誰が無実の罪で殺したのか。もちろん、よく分かっていた。



「……どうしたの?」
 声をかけられて、怪訝そうにしているリーザにようやく気がつく。
「すみません。少し、思い出していて」
 作り笑いで返事をした。
 自覚はあった。少女に返事をする自分がずいぶんと弱々しく、頼りなげであることに。

「神父さん」
 小さな体に見合わぬ決意を滲ませて、リーザが切り出した。
「明日雨がやんでたら、村を出ようよ。ここにいたら、危ないって聞いたの。
リーザ、これ以上お墓が増えるのはいや。リーザが死ぬのもいや。神父さんのお墓は
もっともっと見たくない」
 少女の言葉は、最後は悲鳴のように痛切になって宿に響いた。
 
「私もですか」
「もちろんなの。リーザと一緒に行くの」
 答えには強い意思が見えた。縄で縛って引きずってでも、と考えているのだろうか。
 ジムゾンの立場からすれば、幼い彼女を一人で放り出すなどあまりに危なくて出来や
しないのだが。けれどどうもリーザは、自分のほうが連れて行くのだと思っているようだ。
 リーザを連れて村を離れる。考えていなかったわけではなかった。
 生きていて欲しいと思った相手を逃がしたければ、自分も共に行くしかない。

「村を出るとして、行くあてはあるのですか」
 けれども、なぜか自分の口をついて出てきた言葉は了承ではなかった。
 我ながら意地悪な問いをしたものだ。場末の寒村なぞ、そもそも村の教会が
見えなくなるような場所までさえ行くことのないまま一生を終えるような人間が
とても多い。ましてやこんな小さな女の子にあてなどあろうはずがない。
「リーザは、神父さんがいるところならどこでもいい」
 そんな神父の心中をどう量ったのか、リーザは言い切った。その迷いのない様は
微笑ましくもあり、照れくさくもあった。

 離れるなら離れるで、既に機会はあったのだ。彼女がこの村に留まった理由など、
自分がここにいるからに決まっている。
 村を去るにしても、その後別々の地で暮らすことなどまったく考えていまい。
 ジムゾンはしばし逡巡し、

「……少し、考えさせてください」
 返事を――さらに言えば肯定の返事を待つ少女にそれだけ告げた。
 延ばした所であまり意味はないのではないかと、頭の片隅で冷笑しながら。 
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