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2017-08

残されたもの(3) - 2011.04.12 Tue

分割投下していた人狼BBS二次創作SSの3回目。
4/8の続き。
狼騒ぎ終了後の神×妙話。追記で読めます。これで完結。
読んでくださった方、ありがとうございました。
1回目(4/4)
2回目(4/8)

(3)

 明かりは人が生活している証だ。
 今はもう、村の中ではここにしかないが。

 毛布に包まって眠っているリーザの隣で、ジムゾンは暖炉の炎が燃えるのを
何の気なしに眺めていた。
 雨は夜が更ける間に小降りになっていたから、少女を部屋へ運んで自分は僧房に
帰ることも出来たのだが。
 ……今すやすや寝息を立てている少女が目覚めたとき、狩人の力が消えていたら、
雨の中走り回った今日の自分のように大慌てするかもしれない。
 それは残酷だと思った。

「延ばす必要なんてなかったのに。考えさせてなんて、焦らしてごめんなさい」
 陰惨な日々をようやく切り抜け、なんとか拾った命だ。
 その最中、死ななくてもいい人間を何人も死なせてきた。
 人狼とて生きるために必死になっていた。
 屍の山を築いて、これでリーザまで死なせたら、それこそ愚者でしかない。
 そもそもが彼女のおかげで今生きていられるようなものだ。リーザは、私の身を
救うつもりでいてくれるのだろう。狩人の力が消えようと、最後の最後まで。
 ならばこの真っ直ぐな意思に応えよう。
「……主よ、この幼子にご加護をたまわらんことを」
 結局はこの子にほだされたとも言えるが。
 眠っているリーザに、ジムゾンはそっと毛布をかけなおしてやった。


 身支度は最低限でいい。離れるなら夜が明ける前だ。
 パメラとアルビンがどの道を行こうとしていたか思い出そうとして、ふと気になった。
 二人はあれだけリーザを連れて行こうとしたのに、なぜ自分が死者と共に残ると
告げたとき、渋い顔になったとはいえ強くは反対しなかったのだろうと。
 聖職者の職業病だから何を言っても聞かないと思われていたのだろうか。

 雨が止んだのか気になって、窓の近くに寄ってみた。暗い外とを隔てる窓は、鏡の
ように神父の顔を映す。
 ……どきりとして、ジムゾンは宿の壁にかかった鏡の元へ動いた。確認するように
鏡を覗き込んだしばしの後、思わず苦笑いが浮かぶ。
 なるほど死ぬ気だと言われるわけだ。
 パメラにはジムゾンの姿が幽鬼のように見えたに違いない。
 鏡に映った顔は、自分でも驚くぐらい精気が抜けていたのだから。
 ここしばらく僅かなパンとワイン以外口にしていなかったのもあるだろうが、それにしても
酷い顔だ。よくこんな状態で雨の中走り回ったと思う。
 疲れを意識したせいなのか、急激に体がだるくなってきた。

「この村を、離れる……か」
 椅子に座ると独りごちて、ぼんやり宿の天井を仰ぐ。
 そう。初めは残ることを選んだ。残りの自分の生は、死んでいった者たちへの鎮魂に
あてようと思っていたからだ。もちろんこの村で起きたことが周りに知れてもなお村に
いたら、拾った命を失うかもしれないことも分かっていた。 
 一方で割り切ってもいた。他者の命を奪い続けた己が身は疾うに血塗られているのだ。
奪った者が奪われる者の立場に回る……それならそれでもよいと。とても冷めた心地で。

(……死者のような顔になっていても、何ら不思議ではありませんね)
 神父はゆっくりとリーザのほうを向いた。
 生きる意志に満ちた愛らしい生者は、穏やかに眠っていた。


   ◇  ◇  ◇


 ……いつの間にか自分まで眠ってしまったらしい。
 突っ伏していた宿のテーブルから、ぼんやりする頭を上げる。薄暗い。まだ日は昇って
いないようだ。

「……あれ」
 少し体を動かした拍子に、ばさりと背中から何かが落ちた。振り返ると、床にあったのは
毛布だった。昨夜リーザが包まっていたものだ。
 少女が寝ていたあたりを見ても、宿の中を見回しても、彼女の姿はない。
 リーザはどこに、と喉から出かけたところで、当の少女が外から戻ってきた。

「おはようなの。雨、止んでるよ」
 井戸で水を汲んできたのか、リーザは水桶を抱えている。
「おはよう。村を出るなら、何か持っていきたいものや思い残すことはありませんか」
 少女は目を丸くした。
「そ、そんなに驚かないでください。それより、離れるなら急ぎましょう」
 桶を放り投げて抱きついてきたリーザに、ジムゾンは出来る限り平静をつとめて告げた。


 
 朝日の昇る前。人影が二つ、小さな寒村から出ていった。 

 村から少し離れた高台から、ジムゾンは住み慣れた村を眺めた。
 村長の家、レジーナの宿、オットーの店、ヤコブの農場……主のいなくなった村の
何もかもが小さく、もとより質素だった村がより寂れて見える。 
 ……狼騒ぎさえなければ今日も皆、各々の生活に勤しんでいただろうに。

 教会の墓地に目が向いた。ここから見える墓は、とても小さい。
 昨日、死者が何かを伝えてくれないかと思って訪れた墓地。
 そうだ。ずっと聞きたかった。
 多くの犠牲を出し、その結果自分たちが生き延びた。これでよかったのかと。
 答えのない問いだと分かっていても。


 昨日のように霊視の力が使えないかと考えることはなかった。
 神父は最後の祈りを捧げると、その後はもう二度と村を振り返ることなく、少女と共に
遠い地を目指して歩き始めた。
 迷いのない足取りで。


   ◇  ◇  ◇


 ――忘れ去られた廃村があった。

 墓地には廃村とほぼ同時期に立てられたらしい風化具合の墓石が並ぶ。
 並ぶ墓は、何も語らなかった。
 誰かを罵るわけでもなく、怨みや嘆きを吐くわけでもなく。
 ただ、無言でそこにあった。


  ―了―
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